美しいだけじゃないミュシャ。巨大絵画「スラヴ叙事詩」やミュシャ展の見どころを紹介

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ミュシャについて

ミュシャ「自画像(1899年)」

ミュシャ「自画像(1899年)」

ミュシャの本名は「アルフォンス・ミュシャ」。チェコ語の発音では「ムハ」といいます。モラヴィア(現在のチェコ)のイヴァンチッツェという田舎町に生まれました。

幼いころから絵の才能に恵まれていたものの、なかなか活躍の機会に恵まれなかったミュシャは、最初は生活のため挿絵画家として細々と仕事をしていました。

そんなミュシャが一躍時の人となったのは、大女優「サラ・ベルナール」の舞台「ジスモンダ」のポスター制作を手がけたことがきっかけでした。

無名の挿絵画家だったミュシャは、たった一晩で売れっ子ポスター画家となり、時代の寵児として活躍するようになります。今あるミュシャの美しい女性や装飾を描いた作品の多くは、この時期に制作されたものです。

「ジスモンダ(1894年)」

「ジスモンダ(1894年)」

「ロレンザッチォ(1896年)」

「ロレンザッチォ(1896年)」

画家としてミュシャは大成功を収めましたが、もともと無欲な性格だったミュシャは、自分の才能を富や名声のためではなく、祖国チェコのために捧げたいと思うようになります。

そしてミュシャは、晩年はチェコや自身のルーツであるスラヴ民族をテーマにした作品を数多く描き、やがて16年間かけて手がけた壮大な大型絵画の連作「スラヴ叙事詩」を制作します。

今回の展示会では、このミュシャの集大成ともいえる「スラヴ叙事詩」全20作がチェコ国外で初めて公開されています。

「6 東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン(1923年)」

「6 東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン(1923年)」

「ミュシャ展」の見どころ

スラヴ叙事詩

今回の目玉はなんといってもミュシャの大型絵画の連作「スラヴ叙事詩」です!先述したように、ミュシャは晩年の16年間を捧げて20点の連作の制作に取り組みました。まず、この連作の驚くべき点は何と言ってもその大きさ。なんと、20点の作品のどれもが8m×6m(48㎡)という巨大サイズなんです!

「8m×6m」って、文字で言われてもイマイチピンとこないと思うんですが、図にするとだいたいこんな感じ。

スラヴ叙事詩と人の比較

どうですか!この大きさの絵が20点ですよ!

もはや、上のほうは遠くてマジマジとは見ないので、私は双眼鏡を持参しました。作品の下のほうを見るのには肉眼でも特に問題ありませんが、やはり上のほうの装飾や衣装の描き込みも素晴らしいので、双眼鏡があるとよく見えます。

特に、チケットやポスターにもなっている「原故郷のスラヴ民族」という作品は圧巻。入場して一番最初に見れるのがその作品なのでインパクト大です!一気にミュシャの世界観に没入することができますよ。

横8mという大きさな作品を、少し薄暗い照明の下で鑑賞するため、まるで本当に自分が星空の下にいるような体験ができます。

「原故郷のスラヴ民族(1912年)」

「原故郷のスラヴ民族(1912年)」

作中の人々の力強い眼差しは双眼鏡で!

「イヴァンチツェの兄弟団学校(1914年)」の一部

「イヴァンチツェの兄弟団学校(1914年)」の一部

ミュシャの作品には、人々が力強い眼差しでこちらを見つめている絵が非常に多いように感じます。私が一番印象に残ったのは「ヴォドニャヌイ近郊のペトル・ヘルチツキー」という作品に描かれている中央の女性の眼差しです。

この作品の副題は「悪に悪で報いるな」。戦争で亡くなった多くの犠牲者の傍で悲しみにくれる住民たちに向かい、司祭であり偉大な哲学者であるヘルチツキー(中央の黒い服の人物)が、復讐に走ってはいけないと住民たちを諭しています。

「ヴォドニャヌイ近郊のペトル・ヘルチツキー(1918年)」

「ヴォドニャヌイ近郊のペトル・ヘルチツキー(1918年)」

中央の女性はおそらく、戦争の中で我が子を失ってしまったのでしょう。大きく見開かれた目がこちらをまっすぐに見据えていて、双眼鏡越しに目が合った瞬間、女性の悲しみがこちらにまで伝わってくるようでした。

「ヴォドニャヌイ近郊のペトル・ヘルチツキー」

あいにく大きな画像がなかったため、ここでは女性の表情はわかりづらいですが、この眼差しは美術館で実際に見た方が何倍も迫力がありますよ!

晩年のミュシャの作品はメッセージ性に富み、感情を大きく揺さぶられます。私の双眼鏡はかなり遠くのものを見るためのものだったので、使いどころが若干難しかったですが、近い距離でも焦点を合わせられる双眼鏡だと、より鑑賞がしやすいと思います!

「スラヴ叙事詩」の一部が撮影可能!

今回は展示会では、スラヴ叙事詩の一部が撮影可能エリアとなっています!撮影可能となっているのは「イヴァンチツェの兄弟団学校」「聖アトス山」「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い」「ロシアの農奴制廃止」「スラヴ民族の賛歌」の5点です。どれも大迫力の作品ですよ!

「イヴァンチツェの兄弟団学校(1914年)」

「イヴァンチツェの兄弟団学校(1914年)」

「聖アトス山(1926年)」

「聖アトス山(1926年)」

「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い(1926年/未完成)」

「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い(1926年/未完成)」

「ロシアの農奴制廃止(1914年)」

「ロシアの農奴制廃止(1914年)」

「スラヴ民族の賛歌(1926年)」

「スラヴ民族の賛歌(1926年)」

ちなみに、ここで観れる作品の中には、少年時代のミュシャや、ミュシャの子どもたちがモデルとして登場しています。

たとえば、「イヴァンチツェの兄弟団学校」では、右端の少年が子どもの頃のミュシャです。また、「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い」では、左端の少女がミュシャの娘ヤロスラヴァ、右端の上半身裸の少年が息子イージーがモデルとなっているそうです。

子どもの頃のミュシャ

子どもの頃のミュシャ

ミュシャの娘ヤロスラヴァ

ミュシャの娘ヤロスラヴァ

ミュシャの息子イージー

ミュシャの息子イージー

ちなみに、展示されているスラヴ叙事詩は、公式サイトで画像を見ることができます!解説つきなのも嬉しいですね!
ミュシャ展

デザイナー時代の美しいポスターの数々

今回の展示会の目玉は「スラヴ叙事詩」ですが、やっぱりミュシャといえば、デザイナー時代の美しいポスターの印象が強いですよね。もちろん、その時代の作品もありますよ!

ミュシャが最も得意とした手法は、植物の有機的な曲線をデザイン的に文様化する「アールヌーヴォー様式」と言われるものです。その手法を用いて大成功したのが、「カーネーション」、「ユリ」、「バラ」、「アイリス」を描いた連作「4つの花」です。

他にも、「詩」、「ダンス」、「絵画」、「音楽」を描いたシリーズ「四芸術」も展示されており、こちらも大変美しい作品となっています。

上:「四つの花(1897年)」 下:「四芸術(1898年)」

上:「四つの花(1897年)」 下:「四芸術(1898年)」
引用元:ミュシャ展

やっぱりグッズ売り場は超混雑!

草間彌生展と同じく、ミュシャ展のグッズ売り場も超混雑でした!グッズ売り場って、展示会を見た人しか入れないと思って思ってたんですが、見ていない人も入れるんですね。混雑の理由はそこにもあるのかもしれません。ですが、レジ待ちの行列は草間彌生展のように30分も待つということはありませんでした!

ミュシャ展グッズ

戦利品!

展示会は6月5日まで!

「ミュシャ展」は国立新美術館で6月5日まで開催しています。より詳しい情報は公式サイトを参照してくださいね!

「ミュシャ展」概要

  • 期間:2017年3月8日(水)- 6月5日(月)
  • 休館日:毎週火曜日  ※5月2日(火)は開館
  • 開館時間:10:00 – 18:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
    ※4月29日(土)~5月7日(日)は毎日20:00まで開館
  • 入場料(当日):一般 1,600円 / 大学生 1,200円 / 高校生 800円
  • 会場:国立新美術館 企画展示室2E
  • 公式サイト:http://www.mucha2017.jp/

さいごに

いかがでしたか?ミュシャはどちらかというと美しい女性や装飾を描いたポスターアートの印象が強いですが、晩年は祖国チェコのために巨大な連作を制作したり、なんと紙幣や警官の制服のデザインもノーギャラで引き受けていたというくらい、祖国愛の強い人でした。

国立新美術館では今の時期、「草間彌生展「わが永遠の魂」」も開催しているため、どっちに行こうか迷って決められない時は、どちらもハシゴして一日アート漬け!なんて贅沢なこともできちゃいます。

優美な装飾が施されたポスターだけでなく、心を揺さぶられるような油絵のミュシャが見られる貴重な展示会なので、GWにはぜひ展示会に足を運んでみてくださいね!

「草間彌生 わが永遠の魂」のレポート記事はこちら!
水玉と生きる強さ。「草間彌生 わが永遠の魂」で圧倒的な世界観に酔いしれてきた | Design Color

参考文献

記事を書くのに以下の本を参考にさせていただきました!

余談ですが、私は割とムック本が好きなんですが、中でもミュシャやゴッホなど、画家のムック本に目がないです!

現在発売されているミュシャのムック本の付録は、カーネーション、ユリ、バラ、アイリスを描いた「4つの花」がプリントされた大きめのトートバッグでした。間仕切りポケットがついていて、以外と便利ですw

ミュシャ展に先駆けて発売されたムック本なので、「スラヴ叙事詩」についても詳しく書かれているため、展示会の予習にもなって一石二鳥です!

ミュシャのムック本の付録

ミュシャのムック本の付録

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この記事を書いた人

彩のアバター UIデザイナー

自社メディアサイトのUIデザイナーを経てフリーランスとして活動しています。デザイン・コーディングからサイト運営・改善、バナー作成など色々やってました。

4歳の娘がいます。ゴッホとコーヒーとスナフキンが大好き。

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